「おぼっこ」5号(昭和42年3月1日発行)復刻版


『後智慧の嘆』イキ

(これは極最近のお写真です)
総務部長 山村達也
                   
 グループの最大の目的は、互いに人間的に刺激し、向上し合う処にあり、意識的、無意識に拘らず、与え、受ける処がなければそのグループ内の人間関係は奇形である。少なくとも当グループに於いてはそうである。
 人間の繋がりタイプには大きく、「情」によるものと「知」によるものがある様に思う。そして我々は余りに「情」に偏している。
 僕は或ることでしみじみと感じたことがある。それは「人間皆それぞれ寂しいのだ」と云う、”不安”とは別種な漠たる感じである。言い換えるなら、人間はどこかに常に、何物かによって埋められねばならぬ空洞を持っていると云う、そのことである。齢、二十有数才、遅まきながら、やっと一つの実感として湧いて来た。
 われわれは確かに、その空洞をうめ合って生きている。これが一つのタイプであり、「情」の繋がりである。
 われわれはその空洞を愛う。愛うあまり、無意識に、それを強調し、そのうめ合いの中にのみ人間の絆を結ぼうとする。僕は決してこれを否定はしない。それはそれで美しくはある。唯、この埋め合いの中に終始することに不満を有つのである。さらに、その空洞が相手があることによって、即ち、必ず他者を伴って、満たされ得ると考えるなら、少なからざる問題があるようにも、今の僕には思われる。その何分の一かは、確かに、己れ自身の手によって、埋めねばならぬと思う。当グループの関係とは極限すれば、この空洞の埋め合いではないのか。己れ一人で耐えねばならぬ。あるいは埋めなばならぬ洞さえも、互いに埋め合っているのではないか。
 他のタイプ、「知」による繋がりとはこの空洞を否定し、と云うより、空洞は空洞として、互いが了承し合った上での繋がりである。この繋がりは、冷徹な人間観察、徹底した格闘を必要とし、絶え間ない緊張を要求する。文頭の常套言の遂行も、この甚だしく冷淡な繋がりを一面有していなければならぬと思う。刺激の受容を可能にするのは気障を承知で言えば、人間信頼と、楽天的人間観である。
 「情」による関係は、密着すぎるが故の徹底さを欠き、人間的であるが故に、寛容に過ぎる。そして、人間信頼の上に立ちながらも刺激に少なからず欠ける。しかし、そこには得難い安らぎがあることも確かである。僕は「知」による関係を可とするのでも亦決してない。唯、人間として、特にわれわれは、今少し、厳しい、冷淡な目を持ち、安らぎと同時に緊張を持っても可いのではないかと思う。
 もっとも密なる人間関係をと、われわれは望む、そして、その同じ口から、徹底さが足りぬと云う。空洞の埋め合いのみの繋がりを求める限り、われわれは今の微温的状態を脱し切れぬし、思うが如き刺激も与え、受けられぬに違いない。
 一年間、総務と言う部署を担当し思うことは、何はさて置いてもこの微温的ムードを変革し、一つでも多く、刺激のやりとりの関係が出来る様積極的な努力をすべきであったと、下衆の後智慧を嘆いている。末尾ながら、グループの諸事一般を引き受け、全うしてくれた、会計、記録、装備の諸兄に謝意と敬意を表したい。(公的紙面を私見で埋めた。乞許)
(互いに人間的に刺激し、向上し合う処にグループの存在が今もあるのですね?)


 
『アンケート』

今までに一番恥ずかしかったことは?
 
・ちょっと思い出せません。(小林)

・私の心を知っている人にウソを云った時。(佐々木淑)

・恥ずかしいなんて・・・人生は恥の連続。(細川)

・「アラーうぶだのネ」と云われた時(加藤清)

空を見て何を思うか?
 
・昼空の真青な空は孤独にさせ、人間が弱さを自覚します。夕空ーー非常にロマンチックになります。夜空ーー多数の星くず、泣きたくて泣けない時、思い切って泣かせてくれる。(菊地淳))

・遠い昔の物語、物語・・・。(高橋邦)

・人間のなんとちっぽけかということ。(菅原)

・空の青さに勝るとも、夜空の星より輝ける、あの娘の眼はいまごろ誰を見てるやら、コンチキショー!(佐藤弘)

・いまだなき初恋の人の面影(高橋義)

・いろんな思い出が浮かんできたり、いろんな詩の一節が浮かんできたり、何となく楽しくなったり、さびしくなったり、とにかく夢や希望その他を与えてくれます。(田村)

・どうして空は青いんだろう。そういえばあの人は青が好きだった。今あの人はどうしているんだろう。(伊藤文)

もしユースホステルの会長になったらなにをするか?

なりたくない(福田)

・グループ員に日曜日を与えます。(小笠原守))

・考えられないことを考えるって、難しいのですね。残念ですがパッと出てきません。(佐藤要)

・全ホステラーを一同に集め、「女性ホステラーに美人なく、男性ホステラーに醜男なし」と云う宿年の思いを確認したい(山村))

 

『裏方寸評』

★この男を知らずして、会員たるを許されぬ男がいる。田中秀郷君、その人である。その臆面もなく、それ故、自身では知らず知らずの内に出す数々の名演戯、と名文句はちょっとした見物。副会長として女房役を全う し、その姿が会にないと真に寂しい。長軀痺身、その割にスタイルは「優」とは云へぬ。そこら辺にあの溢れ出る演技の源がありそうである。

★公式行事の写真を一手に引受けてくれた男がいる。御存知、テレ屋の佐々木亮一君。多い時には何百葉もの写真を、レポートを拠って徹夜でやってくれたことも度々。それを知ってか知らずか、口の悪い連中は「佐々木さんの写真は女の子ばかり巧くとれている」などとひやかす。彼は例によって、音を出さずにケラケラ笑ってテレ隠す。しかし確に、彼の作品は不思議と、女の子が多く、しかも、 確実に実物より良くとれている。女性から決して文句の出ぬ以所である。とにかく、御苦労様でた。

★軍隊式の企画部長、浪岡敏幸君。「隊列を組む!」と号令をかける。彼がリーダーになると、どことなくしまりが出る。我をはって中々折れぬ処がまた良い処。酒よし、女よし(?) ダンスよし、とはまずは立派級。

★三年生で綽名を持つ者は少ない。その少ない内で、その風貌と相侯って、知名度、頻度、ともに第一位、「お玉ちゃん」こと、玉山ヨシ君石鳥谷の農家出身。時として、ホステリングに、おタマちゃんが箱につめたタマゴをもって来る、の図が見られる。この一年、美術科と云う特殊技能を存分にコキ使はれた。高山植物に造詣深く、彼女と山を登ると、色々面白い。

★部費といえば関口、関口と云えば部費、今期の会の銭を一身に背負って立った関ロ哲君。寝言に会計のことを口走ったと云う有名な話を持つ程、根も葉も真面目である。また一 面、スタンツをやると素人はだし、文を書くと、本号に載る如き賢治ばりの物語をものにする。

★林科の逸材、別してはダンスのべテラン、富長光彦君、勉強家であることは間違いな い。役員会では常に中道常識派を堅持し、寄与する処少なからず、タマには一年生にも顔をみせろ!

★ホンノリムードの会長、伊藤久雄君。公私共に多忙。どことなく愛敬のある処がいい。十一人のダダッ子をよくあやし、一年間をまずまず終へ、その上、“春”までつかんだ? のは、先ずは同慶に耐えない。

★役員をして得をした女性は多いが「デコ」こと、小原秀子君はその最たる一人。「女性的な、あまりに女性的な」から一歩進んで女性的になりました。六十人の胃を管理して来ました。如何に大世帯になっても困らぬことでしょう。お花も出来ます。料理も出来ます。
サ ァ・・・。

★ガンコこと八重榴和子君。彼女もまた得をした一人。ズバリ女性的になりました。女性代表として副会長を勤め上げ、人間の心の綾も判って来ました。男性は御したのか御されたのか、とにもかくにも、時は叶いぬ、イザ。

★居たか居ないか判らぬ男が一人居る。ムッツリ居士、湯沢豊君。普断は大人しいが、一度口角アワをとばすや、止る処を知らずとか。女性評論家、内省派その他イロイロアラーナ。

★クドキのホリこと堀隷子君。小さいのによく喋る。長々クドク。役員会は彼女の為に十分なる時間を常に与えられなかったことを遺憾とする。クリスチャンと聞く。皆「へェー」 と云う。そこら辺がミソであろう。

★一種ムードのあるオミナこと志田美奈子君。男性を煙にまくのが実に巧い。「オ兄サマー」とやって役員会を抜けることもしばしば、文句を言はせぬ処がみそ。過労と思はれる程、我々の胃の腑を思って働いてくれた。立派なお嫁さんになれます。

★目動車部か、YHGかは判らぬ男が一人居る。その名は藤本勇一君、詳細は不明なれど、手先がキヨウで、なんでもうまくこなすことと、いくら飲んでも飲みたりないらしいと云うことだけは判明している。

★さてドン尻にヒカエシは、自称役員会のガ ン、山村達也君。この人、時として説教口調になるのがモテぬ以所。モテタイくせに女嫌いと称す。そろそろ身の振り方を考えられてはいかがですか?老爺心ながら一言。


『四年生人名録』
              

 ここに記す21名の男女は、ユースホステルグループと云う世界を一年の時から知り、以来四年、大した浮気もせずこのグループを守り通して来た。もし世にユースカラーと云うのが有りとすれば、その毀誉褒貶の多くは彼らに依るであろう。卒業にあたり新たに人名録を編し、去りゆけるオボッコに捧ぐ。
   編するに際し、筆者は左の数点に心がけた。

1つ、虚実を混交する。誇張、ねっ造をいとはない。(特に異性関係に ついては筆者は、一切の文責、その他を負はぬこととする。)
1つ、会員の教養を信んじ難解なるをいとはない。
1つ、読者をして、決して笑はしめぬ。

 この人名録発刊に対し、方方から様々な形の圧力を受けた。その多くは、酒を著っただとか、ホステリング中に筆者にだけ、リンゴを一つ余計にやったではないか等という宛曲にして強力なものであった。しかし、為に筆者は、豪も筆を曲げなかったことをここに誓う。各方面からの信憑性少なる情報の提供に対し、深謝する。

醉夢山人識

伊藤文子さん(盛二 数学科 元企画員)
 「ダエーン」のチャンネエ。時として目を細めて男をみる。決して、色目を使っている訳ではない、念の為。「J、Jに悪いから」と軽くいなして、男を煙にまく。「そして、もうゆくのですか? お文さん!」「ウンダエーン」。ともかく、話やすくて、慕われて、イイ人ダンエイン。

小田嶋猛史さん(旭川東 機械科 元企画部長)
 もうそろそろ、小心、無口、内向性の看板は下してはいかが? 詩を吟じては当学随一、吟じ終って気宇壮大、ついに曰ク「女性コ ンプレックスなんてくそくらえ俺は娶るぞ!才たけて、見目うるわしき女の子をば!」
 タッチャンと呼ばれ、その竹を割った様な処がモテました。
早いもので朗々たる陽関三畳をこんどは我らが吟ずる番とはなりました。
           渭城朝雨潤輕塵  客舍清久新柳色
           勸君更尺一杯酒  西出陽閔無故人


片山多賀代さん(盛二 理科)
 会費完納ありがとう御座います。集会にお顔を出されないので一年生は、お会いしても欠礼致して居ります。三年生のある男性からの話で、御様子など想像致して居ります。即ち『ツエーゾー、絶対にバテナイから』

加藤幹郎さん(酒田東金属 元企画員)
 物静かな卒業生の内でも、この人はまた格別。ミイラの加藤で有名。原稿は締切りまでに必ず提出し、決めたことはちゃんと責任を果してくれます。実に誠意の人、以って範とすべし。寮、学友会にあっては要職を了任し、何かと隠からグループの為にはかって下さいました。我等後輩、満膝の敬意と謝意を表します。

菊地英さん(黒沢尻北 農工元企西員)
 ニヤット笑うその顔、静かに笑う処が良い。四年生になったらばったり、その顔もみなくなりましたけれど、ドッタノ!


佐藤忠弘さん(滝川 理科総務部長)
 一見、苦み走った良い男、色々グループやユースについて文句を並べるけれど、真はやっばりユース人、涙にもろい人情家、そのくせ、自他供に理論家と認める。与えられた命題はとか、条件はと来たら御用心、カミツイタラハナシマセンゾ

一たす二は三とならぬこともある。お判りでしょう。
   ___ 求めても、得られなかったのはあの娘の心とか___
          求めつつ、もとめつつゆく、恋の道?

沢田武夫さん(名寄 応化 元企画員)
 人称して「アサグロキ夜の帝王」マージャンの沢田とも云う。かのロマンなど一ケ所もないようなお方から、最後の一瞬“詩”なるものがコロがり出て、我らを驚ろかした。いや恐れ入りました。 ともかく書くことが多過ぎる人。猪突猛進形、女性にはあまり感心をもたなかった御様子、お気をつけ下さいホントニ!「汝、女のもとにゆくか、鞭を忘る初れ!」


清藤 毅さん(青森 電気 元会計係)
“チロルの山”と云へば、デカパンこと清藤毅、希代のフェミニ ストと人は云う。「大人はかつて自分が子供であったことを時として忘れる。」と云うが、この人は決して忘れていない。ホノボノとした安らぎが 「ワタアメ」にのって伝って来るような人である。飲めぬのに酒を好む。すぐ赤くなり、一説にマダムキラーと云うその目がトロリとなる。
 かくしていよいよその童心は輝き出すのです。

平館信義さん(盛一 応化)
 スキーの平館と云へば知らぬ人はない。「冬のホステラー!」の異名をとる。「当グループのスキー技術向上に寄与したことを認め、スキー狂会名誉会長を許します。1UYHG会長」

田村洋子さん(盛一 書道 元副会長)
「アネゴ」はたまた「おふくろさん」呼び名は色々あるけれど、本体は唯一つ「いくら食べなくとも、寝なくともやせぬ動物」。それが彼女です。 手紙文の名手、だから仮想の友人も沢山います。宿泊数第一位、したがって日本全国ほぼその巨大な・・・を印して来ました。 書はこれ彼女の生きがい。グループの為に本当によく働いてくれました。おかげで、よくぶっかわいがられました。アリガトウ


富田忠征さん(旭川 農化 元会長)
 この人を我ら天皇と称す。御幼少ノ制リ「咲ハ何カ何ンテモ天皇ニチル」ト宜フタトカ。ナニヲトウ間違イ遊ハサレテカ、当会ノ天皇トハナラレタ。玉情誠ニ純ニ宣ラセ給ヒ、蒼生、ヒトシク、幕ヒタテマツル処也。竜顔ヲ拝シタテマツレハ、未タ幼ナカリシ御頃ノ玉懇ヲ止メ給フ。亦、モレ承ケ給ハル処ニ依レハ、「春カ来タ来タ」ト宜ヒシトカ、草民ノ賀シ奉ル処也。
       春うたた、雲上人 恋あまた!

長岡国保さん
 四年生から入会した変ったお方、浮気者らしく、当学のグループで入らぬ方が少いと云うから恐れ入る。世界の情勢と、己が財布の情勢その他に顧みて、わんこそばは、五十二杯で止めたとか?

畠山勝之さん(夕張 応化)
 一見ダンデイでした。一見坊ちゃん風でした。一見モテソウでした。一見スマートでした。しかしどれもこれもおととしの春の話です。(以来音信不通)


福士紘一さん(青森 電気)
 いつでもどこかにいなくてはならぬ人でした。確に。いつでもどこかに居てくれた人でした。確に、彼は一年間カメラそのものでした。彼はレンズと云う非情な目で女性ホステラーをみつめました。そして結論づけました。「ホステラー(特に岩大)に女はいない。」ダカラ彼はいつもニコニコしていられるのです。被写体が悪くてゴメンなさい。安い写真を有り難とう。

藤根 毅さん(花北 農工)
 何をなくしたのか、何を思ったのか、坊主頭になりました。この人も菊地先輩と同じ農工、しかも同じく笑顔のキレイな人です。ダカラ僕ハ、大好キデス

藤村雄治さん(盛工 電気 元副会長)
 自己紹介が千篇一律なことで有名。時として「島崎さん」などと呼ばれたことがおありでは? 司会者、歌唱指導者としても定評がある。「アノネ」で始まる日説はグループ員をして嘆息せしめる。あまり良く働くので、会長と間違へられたとか、ともかく見事な女房ぶりでした。ごくろうさまでした。

米沢洋子さん(福岡 英語)
 女性諸君よ、見習ふべし。彼女はしとやかである。優雅である。
男性諸君よ、反省すべし。その彼女をして、心かよう男性がいなかったとは。涙をのんで見送るのみとはー。たとえて申せば仏母マーヤーの如くにて・・・何んとなく有名な方でした。仏母に説法をいたしましょう。

It is more blessed togive than to receave.
         これ恋愛にも通ず。


松浦和子さん(宮古教職)
 飲むんだって・・・甘酒を。いるんだって・・・ステキな人が。好きなんだって愛することが・・・。そんな女が彼女です。彼女は全く幸せで、一所懸命泣いて、笑ってる馬鹿な人間の一人だ。しかし、そ れでいい。それでいい。この人を素晴しき童女と云はで何んと云う。 ホントニイイオヨメサンニナッテクダサイ

水野裕子さん(盛二 理科 元記録係)
 ある人は彼女を“色気がないと云ふ。彼は知っちゃいないよネ、水野さん。いいよ、いいよ、判かってる。そのうち聞かせてもらうからネ。 この人絶対にエラーが出ない、そこら辺が、”無色“の誤解を生む。理科の優等生。イイ先生、イイお嫁さん、イイお母さん、イイおばあちゃんになれます。そしてなって下さい。

宮本昭雄さん(仙台 機械)
 スマートボーイ、したがって女性的な処あり。センスあり、御用向きの筋は熊本までまでどうぞ「ミーサンすっかりおみかぎりネ」

米田篤証さん(滝川 電気 元装備係)
 この一年間消息不明、本日来信アリ。ひととはば、まだいきているはるの風。


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